
PROJECT
秋川牧園
有機栽培・自然飼育の上場食品企業のリブランディング。食の安全を軸にコミュニケーション戦略を再構築し、発表後半年で株価が2倍以上に。

WHY
持続可能な食の未来を
実現するには?
私たち人類は、古くは狩猟採集社会の時代から農耕社会の時代に至るまで、野菜や肉、魚などの食料を自ら調達する暮らしを送ってきました。しかし、やがて市場を通してそれらを手に入れるようになり、経済合理性を重視した食料生産のため、一次産業の効率化を加速させていきました。
その結果、単一品種の大量生産、水産資源の乱獲などが進み、本来の自然の姿である生物多様性の維持が難しくなり、いま私たちが暮らす地球では生態系の脆弱化が危惧されています。また、グローバル市場における大量生産大量供給を前提とした農薬散布や遺伝子組み換え作物が、私たちの健康に与える悪影響についてもさまざまな場所で議論されています。
食に対する不安が世界中で広がる中、環境負荷が少ない地域循環型モデルを構築し、安心・安全な食を提供するためのチャレンジを続ける事業者たちがいます。持続可能な食の未来のために、少しでも多くの消費者が彼らを応援できる状況をデザインすることはできないのでしょうか。
主要国の農薬使用量の推移

食品を選ぶ際、以下の項目をどの程度意識しますか。

私たち人類は、古くは狩猟採集社会の時代から農耕社会の時代に至るまで、野菜や肉、魚などの食料を自ら調達する暮らしを送ってきました。しかし、やがて市場を通してそれらを手に入れるようになり、経済合理性を重視した食料生産のため、一次産業の効率化を加速させていきました。
その結果、単一品種の大量生産、水産資源の乱獲などが進み、本来の自然の姿である生物多様性の維持が難しくなり、いま私たちが暮らす地球では生態系の脆弱化が危惧されています。また、グローバル市場における大量生産大量供給を前提とした農薬散布や遺伝子組み換え作物が、私たちの健康に与える悪影響についてもさまざまな場所で議論されています。
食に対する不安が世界中で広がる中、環境負荷が少ない地域循環型モデルを構築し、安心・安全な食を提供するためのチャレンジを続ける事業者たちがいます。持続可能な食の未来のために、少しでも多くの消費者が彼らを応援できる状況をデザインすることはできないのでしょうか。






HOW
安全が直感的に伝わる
オーガニックファームの
ブランド。

山口県を拠点とする秋川牧園は、国内有数の規模を誇るオーガニックファームです。1927年に初代秋川房太郎氏が中国・大連で自らが理想とする農園を興して以来、彼らは鶏肉、卵、牛乳、野菜などの生産、加工、配送をワンストップで行い、安心・安全な食を追求し続けてきました。
この秋川牧園のリブランディングを担うことになった私たちは、彼らの実直さや牧歌的なイメージを保ちながら、創業以来一貫した同社の理念や取り組みを、食の安全を求める現代の消費者とつなげるリブランディングを行いました。
同社の特長は、人にも地球にも優しい食の循環モデルを構築していることです。それをストレートに伝えるために、「そだてる、つくる、たべる」という圧倒的にわかりやすいタグラインをつくりました。



「口に入るものは間違ってはいけない」。これは初代房太郎氏の言葉です。創業以来、秋川牧園はこの理念を守り続けてきました。
加工品のパッケージでは、この理念を体現すべく、通常では裏面に小さく入る内容物表記をデザインの主要素としてに前面に大きく示しました。食品添加物をはじめとした「余計なもの」が一切入っていないことを公明正大に表明するデザインです。
また、パッケージやラベルの下部に広がる「房太郎グリーン」の山並みを黒板に見立て、板書による「穴埋め」表現で商品のこだわりを訴求。白地部分においても、教科書や参考書を想起させるようなデザインを展開し、安全な食品を選ぶ知識を楽しく学べる仕掛けを施しました。
CLIENT VOICE
秋川牧園は山口市の田園地帯にあり、理想の食と農を追求し続けている会社です。元々消費者との直接的な関係づくりを志向してきましたが、次のステップとしてブランディングに向き合い始めていました。独自の道を歩む秋川牧園をどう表現すればいいのか?そんな問題意識が太刀川さんとの出会いの背景です。
最初は統一感のない商品パッケージを何とかしたいなと思っていたのですが、やるなら会社のマークから見直しましょう、という太刀川さんの意見に従うこととなりました。太刀川さんはいつもフランクかつスピーディ。デザインの素人である私たちの意見も、使えるものはどんどん吸収していきます。秋川牧園らしさが見える形になったことで、ブランディングがそこから大きく加速した実感があります。
株式会社秋川牧園
秋川正





アイデンティティのデザインにおいては、初代房太郎氏が理想としてきた古き良き農園を想起させる新たなブランドカラー「房太郎グリーン」を設定。さらに、同社が地域循環型の農業モデルづくりを掲げていることから、山口県の山並みをモチーフにした「山」(大地)を「口」に入れているようなイメージのマークを設計しました。既存のロゴマークから継承されたモチーフである牛のまだら模様は、同社のグループ農場が点在する山口県と福岡県の一部の地図の形をしています。ここには、地元とのつながりを強め、地域住民にとって誇れる存在になるという企業の意思が示されています。





冷凍食品以外のパッケージでも、山並みを用いた統一感のあるデザイン展開を行いました。商品が並ぶことで山が連なっていくように見えるため、スーパーなどの商品棚に陳列された際、消費者に視覚的なイメージを残すことができます。
また、商品のネーミングでは、それぞれの「こだわり」を表したコピーを必ず頭に入れるようにしています。「大切に育てた牛乳・ヨーグルト」「地に足のついたたまご」など、特長を抑えつつユーモアも取り入れた商品名になっています。






ダンボールには、4面すべてがつながるような秋川牧園の牧場のイラストを描きました。牧場から食卓までを描くことで、タグラインの「そだてる、つくる、たべる」を表現しています。
さらに、内フタにはタグラインをよりわかりやすく伝えるためのインフォグラフィックを印刷。ダンボールを開けた瞬間に、秋川牧園の理念がひと目でわかります。


WILL
食の未来を
つくる日本発の
ムーブメントに。
私たちが手がけたデザインは、各商品パッケージなどに順次反映され始めています。その結果、都内のオーガニックショップを中心に販路が拡大するなど業績向上の一助となり、リブランディング発表後の約半年間で、株価は2倍以上に高騰しました。安心・安全な食づくりのパイオニアである秋川牧園の魅力や理念を、食の安全を求める現代の消費者とつなぎ直すブランディングは、いままさに始まったばかりです。秋川牧園が食の安全を代表する企業として国内外に認知され、持続可能な食の未来の実現を目指すムーブメントが、山口から世界へと広がっていくことを願っています。


INFORMATION
- What
- AKIKAWA FARM
- When
- 2020
- Where
- Yamaguchi, Japan
- Client
- Scope
- Re-branding / Logo / Packaging / Illustration / Photograph (社内リリース素材使用のみ) / Product Naming / Tagline / Promotion Strategy Support / CI Guideline
- Award
- German Design Award: Gold (2021)
- SDGs
CREDIT
- Art Direction
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa)
- Graphic & Packaging Design
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa, Ryota MIzusako, Ayano Kosaka)
- Photograph
- CCDN (Yuichi Hisatsugu)
- Brand Image Photograph
- Lisa Kashitani
- Video Producer
- LOCUS