PROJECT
Growing Ambition
日本最大の教育系企業とともに、創造的人材育成を目指す大学教育ビジョンを策定。 有機的なアートワークで柔らかな教育像を表現。
WHY
未来をつくることに
自信を持てない子どもたち。
日本の学生の基礎学力の水準は世界的にも高く、我が国の学校教育はこれまで一定の成果を収めてきました。しかし教育の大きな目標のひとつであるはずの創造性に関してはどうでしょうか。自らを「創造的だと思う」と回答した日本人の学生はわずか8%しかおらず、世界平均の44%に遠く及びません(
自分のことを「創造的」だと思う生徒の割合

自分で国や社会を変えられると思う若者(17〜19歳)

この背景には、新しい問いの探究ではなく、答えのある問題を重視してきたこれまでの学校教育の影響があるでしょう。学校の問題には答えが決まっていますが、社会で出会う問題は答えのないものばかりです。変化が激しい時代にこそ、未知の状況から課題の本質を見出し、周囲との合意形成や解を探求する姿勢が大切なはずです。しかしこれまでのステレオタイプな大学教育では、学生は未知の問いとの向き合い方や、将来を描く自己決定のプロセスを学ぶ機会は少なく、今こそ大学にはそういった創造的カリキュラムが求められています。

HOW
変化を生み出す
野望を育む高等教育。

NOSIGNER代表の太刀川英輔は、2022年にベネッセ教育総合研究所が主宰する「高等教育の未来を考える会」の座長を務めることになりました。教育分野で先進的な実践を行う委員のメンバーたちとともに、大学教育の未来について議論を重ね、希望ある未来を描く大学教育ビジョンをまとめた提言書を作成しました。
近年は日本でも学習指導要領に「探究」というキーワードが盛り込まれ、その一環として、将来の夢を探究する授業が行われるようになりました。こうした状況の中、大学教育の現場においても、自身の夢や目標と社会のつながりを探求できる教育が問われています。
入学したばかりの大学生は、受験などを通じて他者から評価されることが学びの目的だと捉えがちです。しかし学びの本質は他者からの評価ではなく、自らの探求テーマと出会い、好奇心と実践を深めていくことにあります。こうした自発的かつ探究的な学びはその後の人生を大きく変える可能性を秘めています。だからこそ大学教育の教養課程において、学びへのマインドセットを「試験」から「探究」へと切り替え、「問い」を発見する下地を育むことが大切となるでしょう。
こうした新しい教育の指針として「GROWING AMBITION ー学生よ野望を抱け」と掲げた提言書では、社会に変化を生み出す「野望」を育む新しい大学教育と、それを実現する創造的なカリキュラムのあり方を提案しています。自分ごととしての大志に満ちた夢(=Big Picture)を、あえて「野望」という言葉で表現し、新しい大学教育への変化を促すための提言書です。
自分が歩む道をデザインする意思を持つこと。それは家族や友人など周りの人々、その先の地域や国、世界とつながり、変革を起こす起点となります。学生の自己成長を促し、勇気を持って自身の大きな志を宣言できるような野望を胸に秘めた学生を育むことが、大学の大きな役割だと委員の皆様と共に考えました。
そして、大学が学生の野望を育む創造の場になるために、「1.挑戦と観察を繰り返して創造性を育む学び場へ」「2.学生が自身で決定し評価する経験ができる場へ」「3.社会と学生自身がつながる経験を提供する場へ」「4.未来を学生自身が変える目標と実感を育む場へ」という4つの観点による提言をまとめ、具体的なカリキュラムの方向性などを示しました。
CLIENT VOICE
「高等教育の未来を考える会」に集まった有志は全員、子どもたちがクリエイティビティにあふれていることを信じて疑わない。子どもたちの創造性が足りないから教育を変えるのではなく、ただ素直に子どもたちの創造性を発揮させられない教育の現況に対する憂いに他ならない。
「野望を抱け」というワンフレーズは、子どもたちに未来をつくることに自信を持って欲しいというエールであり、同時に高等教育改革の為政者に対して子どもたちが本来もつ創造性を起点に改革を実行せよという強い要請でもある。
この野心を秘めたレポートは旧来の価値観を丁寧に退け、教育データを捉えなおす多面的な見方を教育現場に持ち込む教育改革提言書の再発明である。
京都大学総合博物館 准教授/
大阪・関西万博2025政府日本館基本構想有識者
塩瀬隆之








「GROWING AMBITION」のロゴでは、NOSIGNERのオリジナル書体「SIMPLA」と、手書きを思わせる有機的なタイポグラフィを組み合わせ、定型を持たない自由で柔らかい教育のイメージや、予定調和にとどまらない創造的な学習内容を表現しました。教育の提言書としての堅苦しさを払拭し、親しみやすい顔つきにするために、見出しなどには明朝体のかなとゴシック体の漢字が組み合わされ、漫画などによく使われるアンチック体を用いました。
本文の組版においてもロゴを踏襲した有機的なアートワークを展開し、提言が重視する好奇心や変異性、遊びの要素を表現。PDFデータでの配布を踏まえ、綴じられた印刷物では用いることが難しい5カラムの特殊フォーマットをベースとし、全体に動きを持たせています。

WILL
自分で未来を
変えられると
確信できる教育へ。
大学教育には未知を発見する観察と、新たな答えを発想する試行錯誤のプロセスが必要です。偶然の変化へと自らを開き、観察を通して自分で問題や課題、関心事を発見すること。自分でテーマや仮説を決め、自分の学びを自己評価すること。さまざまな社会経験を得て、多様な人々や学びと出会う経験を得ること。こうしたプロセスの先にこそ、得られた専門性によって関係を構築できる実感が育まれ、自分自身の想いや小さな好奇心が社会の未来を変える可能性に気づくはずです。
希望に満ちた「野望」にたどり着く学習プロセスを経験した学生たち一人ひとりが、自分の行動で世界が動くさまを想像し、大学で得た学びを武器に行動を起こすようになった時、創造性や未来に自信を持てないという先述のデータはきっと塗り替えられるはずです。この提言が提示した学習のヴィジョンが、学生たちの「野望」を育む創造の場としての大学を増やす一助となり、自分の手元から未来をポジティブに変える人が増えることを願っています。

INFORMATION
- What
- GROWING AMBITION
- When
- 2023
- Where
- Japan
- Client
- Scope
- Branding / Branding Strategy / Logo / Naming / Edition / Web / Concept Development / Tagline
- SDGs
CREDIT
- Art Direction
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa)
- Graphic Design
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa, Ayano Kosaka, Moe Shibata)
- Web Design
- NOSIGNER (Ryo Fukusawa, Eisuke Tachikawa, Moe Shibata)
- Co-writer
- Eisuke Tachikawa
- Editor
- Benesse Educational Research and Development Institute (Kazuki Kobayashi)
- Members of the Committee for the Future of Higher Education
- Chairperson: Eisuke Tachikawa
Kenta Kimura (HIROO GAKUEN Junior and Senior High School. Director, Medical And Science Course)
Nadya Kirillova (Creative director: Dentsu Team B)
Kazuki Kobayashi (Benesse Educational Research and Development Institute, Center for Educational Research and Development Deputy Director)
Masahiro Sato (Digital Hollywood University Professor/Advisor to the President)
Takayuki Shiose (The Kyoto University Museum Associate Professor)
Kampei Hayashi (Shinshu University, Graduate School of Education, Associate Professor)
Kuniyasu Hiraiwa (NITOBE BUNKA GAKUEN Chairman)
Mina Matsumoto (Sophia University Specially Appointed Professor, Q Lab Representative Director, Journalist)
