
PROJECT
ggg/ Pattern
自然の中に繰り返し現れる形を重ね合わせ、普遍的な美の構造に迫る。

WHY
この世界に
備わっている
美の秘密とは。
社会は急激に変わっています。成長の限界と言われた1972年から50年が経った今でも、我々人類はまだ成長し続けています。生物多様性の崩壊を食い止めるための変化や持続可能な社会を保つためのアクションは、もう時間的な猶予が全く残されていない状況と言っていいでしょう。社会を変える人がもっとたくさん必要だと、心から感じます。どうすれば、そのような人を増やせるのでしょうか。そういえば私達は、物が社会を変えることを「進化する」とよく言っています。社会を変えることが進化だと言うなら、私達はもっと生物の進化から社会の進化を生むためのプロセスを学ぶことができるのではないでしょうか。

水平垂直と重力。
人は造形によく四角形や立方体を用いるが、自然界にはほとんど正四角形は存在しない。パイライトやビスマス結晶のような、ごく一部の 結晶構造を除いて、自然は四角形よりも三角形を選んできた。その理由は、立方体(すべての面が正方形)と正四面体(すべての面が正三角形)を比べてみると、圧倒的に正四面体の構造のほうが強いことからもよく分かる。人間が建築の標準的な構造に選んでいる四角形は、実はたいへん不安定なものなのだ。では、水平と垂直の線が自然界に現れるのはいつだろうか。それは重力によって生まれる線だ。糸の先に重りをつけて垂らすと、完璧な垂直線が得られる。あるいは海の水平線は、ほぼ完全な平行線を描く。このように自然は, 重力と拮抗することで垂直性を手に入れ、逆に重力に負ける形で水平性を得る。人間もまた、重力に縛られた身体を持つが故に、水平と垂直に最適化して進化した。人の視界は平行に周囲を見まわすために効率よくできている。世界の文字の中で、横書きの文字が発達した地域が多いのは、水平に動く目に最適化されているから だろう。その事実は、文化に対する重力の影響がいかに大きいかを表しているように思う。
対称性と安定。
対称形を持つものは安定する。内部に働く応力や 重力とのバランスを考えると、対称形は多くの環境において必然的な選択と言えるだろう。対称形はあらゆる生物に見られる。そして、制約が なければないほどに、対称的な形に近づいていく。花粉やウィルスなど、微小で重力の影響を受けない物体においては、3次元的に点対称となる球体型や多面体構造を基本とした、美しい幾何学的な造形が数多く存在する。それよりも少し大きな自然物の場合、周囲からの制約が増えるために対称性を維持するのが困難になるが、それでも自然は対称を維持しようとして、点対称や面対称(雪や花など)あるいは線対称(動物や葉など)の方向に進化する。最終的にはゾウのように大きな生物であっても、ほとんどの個体は身体に対称性を維持して進化している。自然は安定のために可能な限り対称性を維持しようとする性質があるのだ。強い対称性を持った花を美しいと感じるのは、私達人間だけでなく、引き寄せられる虫など全ての生物に共通の感覚なのかもしれない。
HOW
自然の形態に
共通パターンを探る。

人工物のデザインにおいても, 技術の進歩, 人の趣向性や時代のコンテクストの変容によって, モノは絶えず進化と淘汰を繰り返しています。 多様性を前提とした種の発達は, 生物の進化の形によく似ています。常に発明は人の進化を補おうとしているようにも感じられます。より速く, より楽に、そんな哲学によって進められてきたデザインは, 進化しようとする人類の本能ではないでしょうか。もし生物の進化とデザインが充分に似ているなら、そのプロセスをよく理解し、発明やデザインに応用することでイノベーションを起こしやすくなるはず。進化思考は、そのような考え方から生まれた、自然から学ぶ新しい創造教育のための手法です。


水平垂直と重力。
人は造形によく四角形や立方体を用いるが、自然界にはほとんど正四角形は存在しない。パイライトやビスマス結晶のような、ごく一部の 結晶構造を除いて、自然は四角形よりも三角形を選んできた。その理由は、立方体(すべての面が正方形)と正四面体(すべての面が正三角形)を比べてみると、圧倒的に正四面体の構造のほうが強いことからもよく分かる。人間が建築の標準的な構造に選んでいる四角形は、実はたいへん不安定なものなのだ。では、水平と垂直の線が自然界に現れるのはいつだろうか。それは重力によって生まれる線だ。糸の先に重りをつけて垂らすと、完璧な垂直線が得られる。あるいは海の水平線は、ほぼ完全な平行線を描く。このように自然は, 重力と拮抗することで垂直性を手に入れ、逆に重力に負ける形で水平性を得る。人間もまた、重力に縛られた身体を持つが故に、水平と垂直に最適化して進化した。人の視界は平行に周囲を見まわすために効率よくできている。世界の文字の中で、横書きの文字が発達した地域が多いのは、水平に動く目に最適化されているから だろう。その事実は、文化に対する重力の影響がいかに大きいかを表しているように思う。
対称性と安定。
対称形を持つものは安定する。内部に働く応力や 重力とのバランスを考えると、対称形は多くの環境において必然的な選択と言えるだろう。対称形はあらゆる生物に見られる。そして、制約が なければないほどに、対称的な形に近づいていく。花粉やウィルスなど、微小で重力の影響を受けない物体においては、3次元的に点対称となる球体型や多面体構造を基本とした、美しい幾何学的な造形が数多く存在する。それよりも少し大きな自然物の場合、周囲からの制約が増えるために対称性を維持するのが困難になるが、それでも自然は対称を維持しようとして、点対称や面対称(雪や花など)あるいは線対称(動物や葉など)の方向に進化する。最終的にはゾウのように大きな生物であっても、ほとんどの個体は身体に対称性を維持して進化している。自然は安定のために可能な限り対称性を維持しようとする性質があるのだ。強い対称性を持った花を美しいと感じるのは、私

チューリングパターンと両義性。
シマウマの柄や砂漠の砂丘など, 自然界には 不完全な規則性のある模様が数多く存在する。 全く違う現象の間にも, 本当に良く似た模様が 観察されることがあるが, その基本法則を 明らかにしたのはコンピューターの基本概念を 作った天才数学者アラン・チューリングだった。 彼は若くして亡くなるその晩年に, これらの自然の 模様が複数の要素の間に働く対流によって 生まれることを発見した。 それ以来, この縞模様は チューリングパターンと呼ばれている。 流動性があり密度の異なる要素が複数ある場合に, その両方が絡み合おうとすると対流が生まれ, それがゆらぎとなって, 模様をつくりだすのだ。 実はボロノイ図も, 複数の中心が等価にあるような 特別なコンディションにおいて生まれてくる チューリングパターンの一種である。 対流が生み出すパターンを美しいと思う感覚 というのは, 完全と不完全の間にあるゆらぎに リズムを見出し, そのリズムを心地良いと思う感覚に 近い。 チューリングパターンは, 自然が見せる 音楽的な造形と言えるかもしれない。
ボロノイと調和。
自然には, 要素を最小化して調和を指向する 性質がある。 例えば泡は, 内部の空気を閉じ込めて おける最小の表面積まで縮もうとする。 その過程で, 隣の泡とせめぎ合いながら, 多角形の 美しい幾何学模様を描く。 泡と同じような 幾何学模様は, 蜂の巣, セミの羽, キリンの縞, イギリスのジャイアンツ・コーズウェー海岸の岩など, 自然界の様々なところに現れるが, このパターンはボロノイ図(Voronoi)と呼ばれる。 ボロノイ図は, たくさんの点がせめぎあう状態で, 点と点の間に境界となる中間の線を引いていく, という単純なルールの幾何学だ。 多くの点が ほとんど等価値で共存する場合に, 自然が自動的に 描く形と言えるだろう。 最適化を目指す形を, 僕らが美しいと感じるのはきっと偶然ではない。 もし理想的な流動性を持つビルができるなら, 隣の部屋が空いた途端に壁が自動的に動き, 最小限の部材で空室分の空間が拡張される はずだ。 もし, そんな建物が実現したら, それはボロノイ図のような間取りを持っている かもしれない。

複雑な海岸線を地図上でどこまで拡大していっても, 最後まで複雑な線であることは変わらない。 だから海岸線の正確な長さを測ることはできない。 このように, どんなに拡大しても, 同じようなパターン を持つ図形をフラクタル(自己相似形)という。 ほとんどの自然物は, 成長する時に何らかの 自己相似形を生み出すため, 結果的にフラクタルを 成す形をつくる。 人が美しいと思う造形もまた, フラクタルと密接に 関わっている。 枝ぶりの美しい分岐や, 幾重にも分岐する雷もまた, フラクタルの一例だ。 興味深いことに, インターネットのネットワークの形や 線香花火もフラクタル構造を持っている。 ネットワークが自然に成長する過程で, 自己相似形を成してしまったのだろう。 花火は人類が生み出した最高の インスタレーションであり, インターネットは人間の 歴史において最も成功した発明の一つだが, それらがフラクタルの相似形をしているというのは, とても興味深い事実だ。僕たちは発明を通して 次のフラクタル図形を探しているのかもしれない。
フィボナッチと成長。
レオナルド・フィボナッチは西暦1202年に 「算盤の書」の中で, ウサギが定期的に出産をし, 交配を続けると何匹になるかを計算する 数列(フィボナッチ数)を発表した。 フィボナッチが インドに留学している間に, 現地で学んできたという 不思議な数列だ。 その後の自然科学と形態学の 発展は, この単純な法則と自然物の成長パターンの 間に, 密接な関係があることを明らかにした。 木の若葉の成長を例に取れば, 枝がどのような 位置で分岐していくか, 真上から見た時に 葉の生える位置がどう螺旋を描くか, そして葉が どのようなスピードで大きくなっていくのかもまた, このフィボナッチの数列に支配されている というのだから, この比率でカバーされる自然の 造形論理の範囲は驚くほど広い。 人が最も美しいと感じると言われている黄金比 (約1:1.618)もまた, このフィボナッチ数によって 導かれるものだ。 対称性を保ちながら, とどまることなく成長を続ける造形を, 生命に流れる 美の本能は感じとる。 そこに自然が持っている, 本能的な成長への意志が見え隠れする。
WILL
あらゆる発想法を統合する進化思考の誕生。
小さな実験的展示から始まった進化思考は、いま日本最大級の規模の自動車会社・不動産会社やアパレルのグローバル企業の経営者など、徐々に賛同者に応援されながら広がりつつあります。(参考記事:
INFORMATION
- What
- ggg/Pattern
- When
- 2016
- Where
- Tokyo, Japan
- Client
- Scope
- Installation / Space Design
CREDIT
- Artwork
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa)
- Photo
- Kunihiko Sato