
PROJECT
ggg/ Transformation
生物の形態変化に学び、変化の仕組みから多様性を生む創造プロセスを視覚化。

WHY
未来のために歴史を
振り返る方法とは。
社会は急激に変わっています。成長の限界と言われた1972年から50年が経った今でも、我々人類はまだ成長し続けています。生物多様性の崩壊を食い止めるための変化や持続可能な社会を保つためのアクションは、もう時間的な猶予が全く残されていない状況と言っていいでしょう。社会を変える人がもっとたくさん必要だと、心から感じます。どうすれば、そのような人を増やせるのでしょうか。そういえば私達は、物が社会を変えることを「進化する」とよく言っています。社会を変えることが進化だと言うなら、私達はもっと生物の進化から社会の進化を生むためのプロセスを学ぶことができるのではないでしょうか。
HOW
固定観念を壊して
発想する方法は学べるか。

変形によって、多様性を生む。
生物の種の原型(Archetype) から変形を観察する学問を形態学(Morphology)と呼ぶ。例えばイヌの首を長く伸ばすとキリンのような 形になったり、口を大きくするとカバのような形になるように、近い種は基本となる形態を共有しており、そのわずかな変形によって種の多様性を生み出している。ここで興味深いのは、わずかなパラメータの変化によって生存の確率を劇的に変える方法論を、自然そのものが持っているということだ。デザインの言葉で言えば、マイナーチェンジによってロングセラーを目指すことに近いと説明すれば分かりやすいだろうか。実際にデザインにおいても「パラメータ変形」という考え方は有効である。例えば、椅子の座面を伸ばすとベンチに、座面を広くするとベッドに、足だけを長くするとプールの監視員用の椅子になるように、わずかパラメータの違いであっても、用途の違う無数のバリエーションを出すことができる。自然物にせよ人工物にせよ、長期間生き残る最適な 結論を導き出すには、仮説の多様性を確保する必要があるのだ。自然は、パラメータ変形という手段を用いて無数の種の多様性を生み出す。
人工物のデザインにおいても、技術の進歩、人の趣向性や時代のコンテクストの変容によって、モノは絶えず進化と淘汰を繰り返しています。多様性を前提とした種の発達は, 生物の進化の形によく似ています。常に発明は人の進化を補おうとしているようにも感じられます。より速く、より楽に、そんな哲学によって進められてきたデザインは、進化しようとする人類の本能ではないでしょうか。もし生物の進化とデザインが充分に似ているなら、そのプロセスをよく理解し、発明やデザインに応用することでイノベーションを起こしやすくなるはず。進化思考は、そのような考え方から生まれた、自然から学ぶ新しい創造教育のための手法です。


あるいは、人工物の方が自然物よりも種の融合が容易なことも読み取れます。自然物においてはクラゲとイヌのように種が遠いものは交配できないけれども、人工物では、意外性のある組み合わせからイノベーションが生まれることがよくあるようです。例えば船と車を融合した水陸両用車両や、ヘリコプターと飛行機の融合によって生まれるオスプレイのような例が、人工物では容易に生まれています。
この進化図は、ギンザ・グラフィック・ギャラリーにおいて、個展「ノザイナーかたちと理由」を開催した際に作られたものです。「もし全てのデザインが自然の模倣なのだとしたら。あるいはデザインという行為そのものが、自然の進化を無意識にシミュレーションする行為だとしたら」という仮説から、「デザインは、物の生物学だ」という考えに基づき、人工物と自然物を対比させて、かたちの奥にある理由や、デザインを発想するための方法に迫る展示を行いました。この考えが進化思考のベースとなっています。

WILL
あらゆる発想法を
統合する進化思考の誕生。
小さな実験的展示から始まった進化思考は、いま日本最大級の規模の自動車会社・不動産会社やアパレルのグローバル企業の経営者など、徐々に賛同者に応援されながら広がりつつあります。(参考記事:
INFORMATION
- What
- ggg/Transformation
- When
- 2016
- Where
- Tokyo, Japan
- Client
- Scope
- Installation / Space Design
CREDIT
- Art Work
- Eisuke Tachikawa
- Photograph
- Kunihiko Sato