
PROJECT
PLAY防
防災訓練を「進化」させるNHKの番組企画で東日本大震災を経験したメンバーたちの制作をサポート。4つの防災訓練コンテンツが誕生した。

WHY
現在の防災訓練は、
災害時に本当に役立つのか?
2011年3月11日に起きた東日本大震災は、東北地方に甚大な被害を及ぼしました。この未曾有の大災害によって多くの大切な命が失われ、生存者の中にも「命が助かった後、どうすればよいかわからなかった」と無力感に襲われた人たちが数多くいました。私たちは、地震が起きたら机の下に隠れること、揺れが収まったら校庭に避難することなどを、学校の避難訓練で教えられます。しかし、学校で繰り返してきた訓練はあの日、あまり役に立たなかったと被災者は振り返ります。
災害大国に暮らす私たち日本人がもしもの時に安全に避難し、災害時に少しでも不安が少ない状態で生活を続けていくために、どのような防災の準備や訓練が必要になるのでしょうか?
HOW
退屈な防災訓練を、
楽しい「遊び」に
転換する。

中学生の頃に東日本大震災を経験し、後に復興教育プロジェクト「
現代の中学生たちが適切な防災の知識を持ち、災害時に最善の行動を取れるようにするために、防災訓練を進化させる。この目標に対して太刀川は、発想することに慣れていない若者たちに進化思考を用いた創造性教育を行い、アイデア出しやコンセプト設計、コンテンツ制作をサポートしました。
メンバーたちの経験をもとに設定されたミッションは、「防災訓練をより楽しく、より役立つものにアップデートする」こと。防災を遊びに変え、「時々やらされること」から「いつも楽しくやっていること」に転換していくことをコンセプトに、このプロジェクトを「PLAY防!」と命名しました。そして、およそ1年にわたる取り組みの末、全く新しい4つの防災訓練のコンテンツが生まれ、プロジェクトのロゴや一部プログラムのデザインを我々が支援しました。


Know No Water
日々を生きていくためにどのくらい水が必要なのか、私たちは理解しているのだろうか。そんな問いから生まれた「Know No Water」は、目盛りが振られた5Lのウォーターバッグを使い、手洗いや歯磨き、皿洗いなど生活に必要な水の量を理解し、備蓄や使用方法のコツを考えるプログラムです。オリジナルのウォーターバッグのデザインを、NOSIGNERが担当しました。



無人島メシ
ライフラインが止まっても、私たちはご飯を食べなければ生きていけません。無人島メシは、災害によって生活インフラがストップした状態を無人島になぞらえ、限られた食材と調理環境の中で食を満たす術を学ぶプログラムです。生肉や生野菜などの食材を使用不可とし、さらにレンジや水道、ガスコンロなどが使えない状況をつくり出し、まるで無人島で食事をつくるように調理実習を行います。参加者は、乾物などを駆使して美味しい料理を完成させ、限られた水で洗い物まで済ませなければなければなりません。創意工夫を凝らして防災に役立つ調理技術を身につけます。
ホメッテー ~君が死んだら悲しい~
「あの日が来るまで、誰かの命を大切だと本当の意味で気づいたことはなかった」。ホメッテーは、そんなメンバーの思いから生まれた、命の大切さについて考えるプログラムです。クラスでお互いに褒め合う行為を通じて、もしもの時に助け合える信頼関係を高め合います。参加者たちはオリジナルのサイコロを振り、出た目に従ってお互いに褒め合います。一人ひとりの存在価値や命の大切さに気づき、防災行動に意識的になってもらうことが狙いです。


みんなで逃げよう MACHINAMI
いま住んでいる街は、どのくらい水害の危険があるのでしょうか。MACHINAMIは、洪水ハザードマップの情報を街中に可視化するプログラムです。国土交通省の施策「まるごとまちごとハザードマップ」をベースに、浸水深の高さを示す波型の青いテープを町中に展開。さらに、注意を喚起する看板を水害に対する中学生からのナラティブな情報として伝えることで、浸水リスクのある場所を理解し、直感的に水害の想定範囲が把握できる町をつくります。このデザインはNOSIGNERが担当しました。

WILL
「遊びながら学ぶ」を、
防災訓練のスタンダードに。
「PLAY防!」で開発された新しい防災訓練のプログラムは東京・府中第二中学校で実施され、これらを楽しみながら防災について学ぶ学生たちの姿がカメラに収められました。そして、東日本大震災から10年の節目となる2021年に、「PLAY防!」の一連の取り組みが、NHKのTV番組『ザ・ディレクソン』で1時間のスペシャル番組として放送されました。同企画は大きな反響を得て、同局の5分番組『未来スイッチ』においても、4つの防災訓練の内容が継続的に紹介されています。
近年の気候変動や新型コロナウイルスの感染拡大などによって、防災減災の意味はこれまで以上に大きくなっています。そのような状況の中、私たちは参加メンバーとともに「PLAY防!」を全国の学校に展開できる授業のフォーマットとして広め、防災訓練の新しいスタンダードにしていきたいと考えています。楽しく遊びながら防災について学ぶことを日本の防災訓練の当たり前にして、災害時に励まし合いながら生き延びられる人たちをひとりでも増やすことが私たちの目標です。
INFORMATION
- What
- PLAY-BOU!
- When
- 2021
- Where
- Japan
- Client
- Scope
- Logo / Product / Photograph / Concept Development
- SDGs
CREDIT
- Creative Education
- Eisuke Tachikawa
- Concept Development
- World (Group of grown up Ex-junior high students in Tohoku 2011)
- Graphic Design
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa, Yuko Koike)
- Product Photograph
- CCDN (Yuichi Hisatsugu)
- Shooting Scene Photograph