
PROJECT
smaluna
オンラインピル処方サービスのリブランディング。女性の自由な選択を支持するポジティブなブランド体験を、デザインで親しみやすく表現。

WHY
偏見によって生理のつらさを
我慢する日本女性。
女性の生理は月経前症候群(PMS)などをもたらし、その人の気持ちにも大きな影響を与えます。こうしたときに用いられる低用量ピルは、月経痛の緩和、月経周期の安定、月経前症候群(PMS)の改善、月経の移動などに有効かつ安全な手段として処方されており、実際に女性の社会進出が進んでいる国ほど使用率が高いというデータも出ています。ピルは避妊効果を持つほか、女性特有の苦しみや不安を軽減し、自分らしい生活を維持してくれるものでもあるのです。
婚姻・同棲関係にある女性における低用量ピルの使用率

しかし日本でピルを利用している女性はわずか1~3%と極めて少なく、その利用はほとんど進んでいません。低用量ピルの使用が承認されたのは1999年ですが、避妊以外の効果について知る日本人女性はわずか10%前後。その認知度は横ばいとなっています。日本におけるピルの普及率が世界的水準を大きく下回っている背景には、依然として残るピルに対する誤解とネガティブなイメージがあります。統計によると実際にピルを使いたくない日本の女性は7割強と大多数を占めているのが現状です(日本家族計画協会「男女の生活と意識に関する調査」より)。日本でピルへの正しい理解を広めて、女性が活躍しやすい環境をつくるにはどうすればよいでしょうか。
低用量ピルの使用率とジェンダー・ギャップ指数の散布図

ジェンダーのギャップが低い国ほど、ピルの使用率が高い傾向にある。
HOW
「わたしらしい波」に
近づくためのピルの普及。

オンライン診察やピルの処方・相談が受けられるサービス「スマルナ」のリブランディングを担当し、ブランド全体のクリエイティブディレクション、ロゴやパッケージ、スターターキットなどのデザインを手がけました。
私たちはまず避妊のイメージが根強いピルをポジティブな体験に変換することを目指し、生理によって引き起こされる荒波から開放されるイメージを表す「わたしらしい波」というブランドコンセプトを据えました。そしてブランドの頭文字である「S」を安定した波に見立てたシンボルマークと、ループ状の「L」を核としたロゴタイプによるブランディングを設計しています。さらに体調や感情など一日の中で変化する「波」を、朝焼けから夕焼けまでの変化をイメージしたグラデーションで表現。女性が生理にまつわる緊張や制約から開放され、自分らしい周期を取り戻していくさまをブランディングに抽出しました。


透過性のある素材の薬袋には補色関係にあるフィルムが重ねられており、中に入れたモノだけに鮮やかな色がつくようにデザインされています。こうした表現によって生理による苦しみを中和させ「わたしらしい波」に整えてくれるピルの体験を視覚化しました。シンプルでニュートラルなパッケージデザインは、目につく場所にピルを置くことへの抵抗感を軽減させ、中に入れたピルがカモフラージュされる仕様になっています。またパッケージの片面を白くすることによって、ユーザ自身が状況に応じて中身を見せるかを選択できるようにしています。


「低用量ピル」「中用量ピル」「アフターピル」の3種類それぞれの服用方法や効果、質問集などを収録したスターターキット「はじめてガイド」には、ピルの使い方だけでなく正しい選択に自信を持ってもらうためのメッセージを綴りました。手紙を連想させるブックデザインには、自分らしく生きたいと願う女性たちに寄り添い、その選択を肯定するスマルナのメッセージが込められています。



WILL
女性が自分らしくあれる
方法を選択できる社会に。
スマルナはピルの使用に対する偏見からその使用に心理的障壁が多い日本の女性にとって、気軽にピルを体験する接点として支持され、サービスブランドとして急成長を続けています。
本プロジェクトを通じて、生理にまつわる苦しみを軽減し、自らのコンディションを整えるための選択肢としてピルを定着できれば、自分らしい波を生きる女性を増やせるのではないかと私たちは考えています。
スマルナの取り組みの先に、女性たちのウェルビーイングを前提とした選択が当たり前のものになる社会が訪れ、多くの女性が活躍できる状況に近づくことを私たちは信じています。
INFORMATION
- What
- smaluna
- When
- 2020
- Where
- Japan
- Client
- Scope
- Branding / Logo / CI Guideline / Packaging / Pamphlet / Photograph
- SDGs
CREDIT
- Art Direction
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa)
- Graphic Design
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa, Ayano Kosaka, Nozomi Aoyama, Moe Shibata)
- Photograph
- NOSIGNER (Yuichi Hisatsugu)
- Collaboration