
PROJECT
越前漆器
福井県鯖江市の越前漆器産地をブランディング。禅の精神を映すロゴデザインと、東洋インキと共創の「ZEN BLACK」で伝統をひらく。

WHY
衰退する漆器産業を、
未来につなげるために。
福井県鯖江市は日本最大規模の漆の産地であり、河和田地区を中心に生産されている越前漆器は、1500年の歴史を持つ伝統工芸品として知られています。現在の越前漆器には、高い技術力を背景にした本漆塗の工芸品と、全国のおよそ8割ものシェアを占める旅館や飲食店向けの業務用漆器という2つの顔があり、複合的な産業構造を抱えながら、日本最大の漆器産地の地位を保ってきました。しかし、かつては日本人の生活になくてはならなかった漆器も時代の流れとともに衰退し、各地の産地が厳しい状況に追い込まれています。こうした状況の中、日本最大の漆器産地である越前漆器には、産業を未来に残すために、新たな道筋を提示することが求められていました。



HOW
漆の工程を
一目瞭然にする
ピクトグラムの発明。

越前漆器のブランディングに携わることになった私たちは、本漆塗りの伝統工芸品と、業務用漆器という2つの異なる顔を持つ産地において、両者のポテンシャルを最大限活かすために、地場産業を「伝統」と「革新」に因数分解することをテーマに据えました。「伝統」軸の取り組みとしては、消費者が安心して本漆の伝統工芸品を買えるように、本漆塗りの製品には認証マークを設定。同時に、これまでメーカーごとに行われていたブランディングを、パッケージの共通化などによって統一することで、アップセルを実現させました。一方、「革新」軸の取り組みとしては、越前漆器ではなく、「越前漆」という名称を打ち出し、合成漆器の生産などを通して磨かれてきた漆塗りの技術を、メガネや携帯電話、車などあらゆるプロダクトに活用し、「塗装」の産地となることで新たな産業を創出することを目指しています。さらに、製品の特性を表すピクトグラムを開発し、プライスタグに表記することによって、それまで判別が難しかった多彩な越前漆器の製法や特性を、消費者がひと目で見分けられるようになりました。




























越前漆のシンボルマークは、禅における悟りの象徴である円相をモチーフにしており、同時に器にも見えるように設計されています。さらに、「ZEN」という文字が含まれている産地であることを明確にしたタイポグラフィによって、曹洞宗の大本山で、700年以上の伝統を誇る禅の道場「永平寺」に近い産地であることを伝え、歴史的な関係性を表現しています。



さらに「革新」軸の取り組みの一環として、日本最大級のインキメーカーである東洋インキグループとともに、漆が日本に伝来してからの1200年間で最も黒い漆を開発しました。東洋インキが持つカーボンナノチューブ(CNT)分散体の技術と、漆職人の技術とを融合させることで生まれたこの「ZEN BLACK」によって、業務用漆器にかつてないほど深みのある黒を塗れるようになるなど、「塗装」の産地としての可能性を広げるプロジェクトに大きな期待が寄せられています。



WILL
全国の漆産地の
希望になる。
「伝統」と「革新」の2つの方向性を明確に示すことで新たな歩みを始めた越前漆は、高級感のあるブランディングと共通パッケージ化によって10%の上代アップを実現し、売場での「うるしピクト」の実証実験においても売上が20%増となるなど、早くも成果が現れ始めています。これからも越前漆は、日本最大規模の漆の産地としての地位や価値のさらなる向上に務めていくとともに、ピクトグラムをはじめとした新たな取り組みを積極的に発信していくことによって、厳しい状況に立たされている全国の漆産地の道標となり、日本の漆産業全体の活性化に寄与していくことを目指しています。
INFORMATION
- What
- ECHIZEN URUSHI
- When
- 2019
- Where
- Sabae City, Japan
- Client
- Scope
- Design strategy / Branding / VI / Infographic / Illustration / Exhibition
CREDIT
- Art Direction
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa)
- Graphic Design
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa, Toshiyuki Nakaie)
- Production
- OKTS inc.