PROJECT

Cartesia

世界的デザイン誌『Wallpaper*』が、「世界一美しい引き出し」として評価。

WHY

日本有数の木工業の産地を、
未来につなげるために。

江戸時代の阿波藩の水軍を支えた船大工の技術が伝承されている徳島県は、明治から昭和にかけて、タンスや鏡台、仏壇を中心とした箱物家具の一大産地として発展しました。しかし、この40年の間に生産額が1/5にまで減少している日本の伝統産業の例に漏れず、ライフスタイルの変化や廉価な海外製品の台頭とともに徳島の木工業は年々衰退し、日本有数の箱物家具の産地は窮地に追い込まれていました。廃業する木工業者が後を絶たない状況の中、高い技術力を持つ徳島の木工職人に新たな手仕事の機会をつくり、産業を復興させるために、デザインには何ができるのでしょうか。

伝統的工芸品産業の生産額等の推移

HOW

二方向に引き出せる、
史上初の引き出しを発明。

徳島の木工職人が持つ高い技術力を発信し、他の産地と差別化を図ることをミッションに、これまでの箱物家具の概念を覆す「CARTESIA」を開発しました。「直交座標系」という意味を持つブランド名の通り、CARTESIAは縦横両方向に引き出すことができ、複数の段を同時に使用することができる引き出しです。職人とともに技術開発を行い、従来の引き出しでは不可能だった機構を実現させた第1弾プロダクト「CARTESIA　DRAWER」は、台形を重ねた形にすることで引き出しやすさにも配慮しています。

WILL

デザインは高く評価されたが、
本来の目的はその先に。

まったく新しい概念の箱物家具として、CARTESIAは、『Wallpaper*』誌に「世界一美しい引き出し」と称されたことをはじめ、世界中のデザイン賞やメディアから評価され、国内外のさまざまなショップでも取り扱われることになりました。デザインの力を活用し、伝統技術と消費者の間に新しい接点を生み出すことができたこのプロジェクトは、産地における成功事例となりましたが、同時に危機的な状況にある産地には、ひとつのプロダクトをデザインするだけでは到底太刀打ちできないほど強い逆風が吹いていることを改めて実感しました。私たちの目的は、そのデザインが高く評価されることではなく、ブランディングやコミュニケーション戦略などを通じて新たな市場やムーブメント、関係性をつくり、少しでも多くの職人や産地を救うことです。NOSIGNER・太刀川が徳島県の伝統産業プロデューサーとして2007年から2009年までに手がけた一連のプロジェクトは、その後の私たちのミッションを決定づける重要な経験となりました。