PROJECT
JAPAN NUCLEAR-WASTE SAFETY MANAGMENT DESIGN STRATEGY
日本政府の抱える放射性廃棄物最終処分についてのデザイン戦略を策定し、再生可能エネルギー戦略とのブリッジを提案。
WHY
放射性廃棄物の
最終処分という
文明の宿題。
日本が1960年代から行ってきた原子力発電は、人間に有害な放射性廃棄物を生み出します。使い終えた燃料を再処理した後に残る高レベル放射性廃棄物は現在、青森県六ヶ所村の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターで管理されていますが、放射能レベルが十分に減衰するまでには数万年という非常に長い時間を要します。さまざまな検討を通じて、高レベル放射性廃棄物は人間による管理に委ねず、地下深くの安定した岩盤に閉じ込め、人間の生活環境から隔離する「地層処分」が最適だと考えられています。しかし未だに日本では最終処分場が決まっておらず、世界中の多くの国々も放射性廃棄物の最終処分に関する合意形成ができていないのが現状です。
再生可能エネルギーへのシフトが世界的に進んでいるとはいえ、すでに日本中に約25,000個存在し、現在も発生し続けている放射性廃棄物の最終処分場は、地球に暮らす人々の安全を守るために、いつか必ず必要になる場所です。しかし実現のための対話の溝は埋まっておらず、文明に課された大きな宿題は先送りにされ続けています。
原子力発電所内および再処理工場における使用済核燃料貯蔵量(2018年9月時点)

HOW
放射性廃棄物処分と
再生可能エネルギー政策の
融合。

放射性廃棄物に特化した日本唯一の調査研究および資金管理機関である原子力環境整備促進・資金管理センター(原環センター)より、「進化思考を使って、この大きな課題の妙案となる戦略を考えてほしい」という依頼を受け「放射性廃棄物最終処分のためのデザイン戦略提言」をまとめました。
現在、最終処分計画に反対する人たちは少なくありません。こうした方々の多くは、原子力発電政策そのものに反対しています。
そこで私たちは原子力発電政策と放射性廃棄物処分政策を切り分け、親原発/反原発を問わない中立な立場から最終処分の必要性を伝えていく戦略の重要性を提案しました。
具体的なアクションとして、まずは最終処分政策が原子力発電を推進するものであるという誤解を解くことが大切だと考えました。仮に現在の日本からすべての原子力発電所が即座に廃炉されたとしても、およそ25,000本に及ぶ放射性廃棄物は依然として残ります。そしてこの問題は、放射性廃棄物が天然ウラン並みの放射線量に弱まるまでの数万年単位のタイムスパンで考える必要があります。かたや現在の原子力発電技術は数十年単位で激変しており、廃棄物の問題ほどには長期間人類が頼り続けるエネルギーの仕組みではないことが明白だからです。
そこで本提言では放射性廃棄物処分の政策から「原子力発電環境整備」という考え方を廃し、NUMO(原子力発電環境整備機構)のロゴや名称を「放射性廃棄物安全管理機構」に変更する提案をしました。本来、現在の英語名であるNUMO(NUCLEAR WASTE MANAGEMENT ORGANIZATION OF JAPAN)を直訳すれば、上記の訳になるにも関わらず、不思議なずれが生じていたのです。また同時に、原子力環境整備促進・資金管理センター(原環センター)の「原子力環境整備促進」を、「放射性廃棄物安全管理センター」という名称に見直す提案もしました。 それによって日本の廃棄物処分政策を、原子力政策から切り離して考え始めることが可能になります。



2011年の福島第一原発事故への反省を真摯に発信することも大変重要なことです。この事故によって原子力発電の安全神話は崩壊しました。それにも関わらず、現在も大量の使用済み核燃料が沿岸部の原発に保管されています。この状態を継続する限り、また不慮の事故が起こらないとも限りません。過去の失敗や現在のリスクを認めた上で、痛ましい事故を二度と起こさない決意を示すことがはじめの一歩となるでしょう。現在の使用済み核燃料の原発内での長期保管の危険性を示し、現在よりも地層処分後の方がはるかに安全性が高い事実を数字で可視化することが、最終処分への理解を促す上で有効なはずです。
最終処分政策を原子力政策と切り離した上で、再生エネルギー政策の発展と連携を強化し、誘致先を再生可能エネルギーの先端開発地域とする内容を提言に盛り込みました。
現在、最終処分政策に反対する脱原発派の方々にとっても、持続可能なエネルギーの社会をつくることは共通のテーマです。再生可能エネルギーの先端推進タウンの実現を採用地の産業誘致につなげる提案は、地域の産業政策として有効なだけでなく、政策への理解を促す効果も期待できます。


人類史に残る施設を、どのように設計するかも重要なテーマとなるでしょう。最終処分場の隣には1km四方の膨大な盛り土が生まれる予定です。その土地を活用した1km四方のメガソーラーを設計し、そこに流れる風と放射線量が美しく可視化される世界一巨大なガイガーカウンター「HYPER GIGER」をつくり、安全を発信し続ける聖地とするデザインコンセプトを提案しました。


コミュニケーション面では、地層処分の安全性を正確に伝えるために、ポンチ絵的な表現から脱却し、よりリアルなCGによる図示・説明を強化することで、政策の精緻性を伝える必要を訴えました。
数万年後のことは誰にも分かりません。現在の言語は通じないと思ったほうが良いでしょう。そこで数万年規模のタイムスケールで未来と真摯に向き合い、数万年後の人類・知的生命とのコミュニケーションや、あらゆる環境の変化を想定することを通じて、未来の世代に責任を果たす姿勢を広報する必要性を訴えました。


WILL
未来と真摯に向き合い、
最終処分の実現へ。
未来と真摯に向き合い、最終処分の実現へ。
我々が提言したデザイン戦略は、放射性廃棄物最終処分の専門家を中心に非常に良い反応を得ました。しかしながら本提言は、まだ具体的政策には盛り込まれるところまで至っていません。
放射性廃棄物の最終処分は、さまざまなステークホルダーがいる非常に難しい課題ですが、必ず人類に必要な施設であり、日本の将来に不可欠なものでもあります。その実現のためには多くの人たちに共感いただける戦略を発信し、理解を深めてもらうことが大切です。
数万年先の未来のことは誰にもわかりません。しかし、わからないからこそ、過去の文脈にとらわれず、未来のために真摯に向き合い、未来にとっての必要性を伝え、未来にとって必要な新しい方法をつくり出すことが大切です。その誠実さを伝え続けることによって採用地との合意形成が果たされ、日本の未来に必要な場所を実現できると信じています。




















INFORMATION
- What
- JAPAN NUCLEAR-WASTE SAFETY MANAGEMENT DESIGN STRATEGY
- When
- 2019
- Where
- Japan
- Client
- Scope
- Concept / Proposal / Graphic Design
- SDGs
CREDIT
- Strategy proposal
- NOSIGNER(Eisuke Tachikawa)
- Art Direction
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa)
- Graphic Design
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa, Andradtya dhanu respati)


