PROJECT
BODY WILD
ボクサーパンツのナショナルブランドをサステナブルに再構築。紙使用量を1/3に削減し、FSC素材で環境配慮型ブランドへ転換。
WHY
アパレル産業は
持続可能になれるか?
製造から輸送、販売に至るサプライチェーンが非常に長く複雑なアパレル産業は、その過程で年間12億トンに相当する温室効果ガスを排出し、930億㎥/年の水を使用しています。前者は、国際航空業界と海運業界の合計を上回り、後者は500万人のニーズを満たす量に相当し、工業用水汚染の20%は繊維の染色と処理によるものだとされています。
アパレル産業サプライチェーンの年間温室効果ガス排出量(2015年)

アパレル産業サプライチェーンの年間水使用量

シーズンごとに新作がリリースされるファッション業界の慣習もまた、大量生産・大量消費・大量廃棄を助長している側面があり、1年間で廃棄される衣類は9,000万トンを超え、これは約3000億着に相当するものです。
これらの事実から、環境負荷が最も大きな産業のひとつと目されているアパレル産業は、一刻も早く持続可能な産業構造にシフトすることが迫られています。
年間衣類廃棄量(2020)と年間衣類廃棄量予測(2030)

HOW
身体と自然のための
アンダーウェア。

BODY WILDは、インナーやストッキングなどを扱う繊維製品メーカー「グンゼ」が、1998年から展開してきたアンダーウェアブランドです。ボクサーブリーフをはじめとする高機能・高品質の製品群を支える最高峰のテクノロジーとクラフトマンシップを有し、日本のインナーウェアにおける先駆者的存在として知られるBODY WILDですが、近年はファストファッションの台頭や若年層の認知度の低下などによって伸び悩んでいました。
こうした中で私たちNOSIGNERは、ブランド設立26年目に行う初のリブランディングを担うことになりました。アンダーウェアを取り巻く状況が変化している中で、今後もブランドが市場で存在感を示していくためには、老舗大手としてのポジションを維持するためのブランドのチューニングに加え、市場のニーズを捉えながら競合ブランドとの差別化を図る新たなコンセプトを加えることで若年層を取り込むことが必要です。そこで私たちは、市場の大半が求めている「ニュートラルなデザイン」と、高い訴求力・拡散力を持った「強力なブランドメッセージ」を両立させ、独自のポジションを確立するブランド戦略を探りました。








21世紀のファッションにおける最大の潮流である「サステナビリティ」と正面から向き合うことを掲げ、リブランディングと同時にパッケージや製造面での脱炭素、および寄付つき商品などの施策を提案。さらに京都発ブランドのアイデンティティである「クラフトマンシップ」や、高度なテクノロジーによる「身体へのフィット感」にフォーカスし、「自然(WILD)を身体(BODY)に回帰する」をブランドコンセプトに据えました。こうしてBODYWILDは、着用することで身体が心地良くなり、自然との共生を感じられるサステナブルなブランドへと歩みを進めています。







これに併せて、「男らしさ、力強さ」が表現された従来のロゴを、「自然、ありのまま、自分らしさ」といった現在の「ワイルド」を体現したニュートラルなデザインに刷新。シンボルマークのモチーフには、自然と一体となる動物の象徴として、周囲の環境に溶け込む適応性を持つシマウマの模様を取り入れ、ニュートラルなバーコードのようにあしらっています。また縦横比を可変できる「バリアブルロゴ」を設計。インナーウェアから新たに展開するジャケットやパンツ、ハットまで、あらゆるアイテムに柔軟に展開できるようにしました。
キーヴィジュアルに絶滅危惧種のグレビーシマウマの写真を用いることで、サステナビリティへの配慮を表明しました。モデルカットも、社会への反骨心と挑戦心を高めるブランド初期の表現へと回帰し、挑戦者のウェアとしての位置付けを明確化しました。
さらに新たに設計したパッケージデザインでは、紙の使用量を従来の1/3に減らし、持続可能な森林管理を伴うFSCのパルプを使用するなど、などサステナビリティの実践につなげています。


WILL
持続可能なアパレル産業の
実現へ。
今回のリブランディングによって、BODY WILDは従来のメンズアンダーウェアブランドから、21世紀のサステナブルなトータルアパレルブランドへと大きな一歩を踏み出しました。 その歩みを確たるものにするために、NOSIGNERではブランディングのみならず、ブランド全体の再生可能エネルギーへのシフト、サーキュラーエコノミーのためのリサイクル素材の採用、オーガニック素材の採用、B Corp化の推奨、カーボンオフセットによる実質ゼロカーボン化など、包括的な提案を行っています。実際に、自社事業の植林によって、実質ゼロ・カーボンを実現した商品も生まれ始めています。
アンダーウェアを扱う国内老舗企業の繊維製品メーカーであるグンゼが、環境やサステナビリティをブランドメッセージの中核に据えることは、1つのブランドのリブランディングという枠を超え、変革が求められているアパレル産業全体に影響を及ぼすものとなるはずです。
今後も私たちは、再生可能エネルギーや気候変動適応、生態系保全のプロジェクトなどにも取り組んできたデザインコンサルティングファームとしてのノウハウを活かしながら、環境負荷の低減を図るブランドの取り組みをサポートし、同社ならびに産業全体の持続可能な変革に貢献していきたいと考えています。

INFORMATION
- What
- BODY WILD
- When
- 2023
- Client
- Scope
- Logo / CI Guideline / Packaging / Tagline / Promotion Strategy Support
- SDGs
CREDIT
- Art Direction
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa)
- Graphic Design
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa, Ryo Fukusawa, Ayano Kosaka, Yuta Horimoto)
- Management
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa, Kentaro Yasuda)




